自分のできないこと、苦手なことを知る。「競争」ではなく「共創」の時代。

鹿瀬島正剛さん

弁護士の仕事の本質について、どのようにお考えですか?

教師や医師と同じように弁護士も「先生」と呼ばれます。「先生」と呼ばれる仕事は、社会的な使命や義務を負っていると考えています。それは人が嫌がることでもやらなければならないことがあるという義務です。
依頼者は何かしらの問題やトラブルを抱えて相談に来ます。それが一人や二人ではないので、時には「しんどいな」と思うこともあります。座右の銘として「痩せ我慢」というのをあげていますが、弁護士は痩せ我慢をしてでも、先頭で旗を振らなければならない時がある仕事だと思っています。

今後はどのような展望をお持ちですか?

実は、弁護士になるとき妻に「弁護士という仕事が自分に向いているとか向いていないとかあれこれ言わず、10年は黙って続けるけど、その後は分からない。」と話をしました。今15年目を迎えているので自分に向いていないとは思いませんが、弁護士という職業にこだわるつもりはありません。
ボクが大切にしているコトバは「感動」です。「感動」がボクの原動力であり、このコトバのために生きたり死んだりできる、というぐらい大切なコトバです。この先も弁護士に限らず、自分の心が動いたり、人の心を動かしたりする瞬間が体感できる場所に身をおきたいですね。

後輩たちにメッセージをお願いします。

母校の熊本高校でここ8年ほど弁護士として講演をしています。そこでも話すのですが、今はリーダーに求められる能力が変わってきています。ボクたちが子どもの頃は一握りのエリートを作り、そのエリートが国や会社を引っ張っていき、結果として日本全体の底上げをしていく社会が想定されていました。
ところが今は他の人の能力を伸ばす力を持っている人が求められています。
これからは「競争力」ではなく「共創力」が求められる時代なのです。これは、東京大学を卒業してチームラボという会社を設立した猪子寿之さんという人が言っていた言葉ですが、めっちゃ共感しています。

そのためにはどうしたら良いのでしょうか?

まず、自分の能力に足りないところがあることを知ることですね。足りない部分がわかっていないと「何でもできる」と過信するか、あるいは「何もできない」と過小評価してしまいます。
10のうち7は自分でできるとわかったら、できない3をどう補うか。ボクの世代は自分の能力を最大限に引き上げることをがむしゃらに頑張ってきましたが、これからはいかに人の能力を引き出すかを考える時代です。熊本高校ではこんな例え話をしています。大学に入って、免許を取ってドライブに行ったとします。途中で故障したら、たとえ東大の理Ⅲに受かるような優秀な人だったとしても自分では直せないかもしれない。そんなときに、すぐに直してくれる友だちが頭に浮かぶでしょうか。電話して状況を話したときに「すぐに行くから待ってろ!」と言ってくれる友だちが何人いるでしょうか。このように人の能力を活かすには、まずは自分の能力を惜しみなく提供することが必要です。
昨年熊本高校での講演でこの話をしたら、ある生徒が、すぐに校内で勉強会をはじめました。勉強でわからないところは彼に聞く。彼が苦手なところは他の人が補う。彼は東大の理Ⅲに現役合格しました。チームとしての力が個々の能力も引き上げることになる証です。
ボクも自分に足りない部分を依頼者と補い合えるような弁護士になりたいと思っています。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

鹿瀬島さんインタビュー「こぼれ話」

中学の3年間、能開で濃密な時間を過ごした鹿瀬島さん。高校や大学に進学した後も、時折熊本本校に顔を出したと言います。高校1年生の夏休み、三井先生に「夏期特訓があるから後輩の激励に来てほしい」と言われ、そのまま中3生と一緒に授業に参加させられ、挙げ句に徹夜するはめになったことも。大学生のころ、夏休みで帰省している間、夏期講習の講師も務めたそうです。「三井先生に言われたら断れないですよね」と笑顔で思い出話を話してくださいました。

教育理念 困難な時代を生き抜く力

ティエラコムは、創業期より「困難にたじろがない ひとりで勉強できる子に」を教育理念としてまいりました。
「学習塾」とは一線を画した「総合教育運動体」としての姿勢を貫き、子どもの成長の礎となる人間の生地を鍛える教育の実践こそが、私たちの使命であると考えます。

人が生きていく過程には、避けて通れない『困難』が待ち受けています。
それらを安易に回避したり、ストレスで押しつぶされたりといった現代人の忍耐力のなさが問題視されています。
私たちは、困難を乗り越えた先にある喜びを味わえるようあえて多くの試練を用意し、鍛え、励ますことが教育者の役割であると考えます。

私たちの教育目的は、時代やグローバル化の要請に応じて、有用な「人材」を育て社会へ送り出すことではありません。
試練を乗り越えた喜びとともに得た自信を年輪のように重ねた人間こそが、自身の幸せをかみしめ、より豊かな国や世界をつくっていくと確信しています。

ティエラコムの企業活動は、常に「変わらぬ理念」と「新たな挑戦」のもとにあります。

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