精神科病院で唯一の内科医として責任の重さをかみしめる日々。

永田先生医師を目指すことを決めたのは、いつ頃ですか。

藤井さん高校3年の夏です。最初は実家の病院を継ぐことが宿命だと考えていましたが、今ではこの職業に就いてよかったと心から思います。 大変なこともたくさんありますが、やりがいがある仕事なのでこれまで辞めたいと思ったことは一度もありません。

永田先生いくつも困難を乗り越えてこそ、本当の仕事のやりがいを手にできるのかもしれませんね。

藤井さん確かに、当直明けは肉体的にもキツイです。でも、中学生で味わった夏期講習の「徹夜学習」に比べたら大したことではありません(笑)。そういう意味では、能開と医師の仕事は共通点を感じます。“大変だけどやりがいがある”とか“キツイけど楽しい”は、どちらも前に進んでいる感じがして、自分を奮い立たせて挑みたくなるものです。
共通点といえば、私が医師国家試験の模試を受験した時のこと。かつて、能開の試験で全国順位の上位の常連だった名前を見つけ、「あ、能開の人だ!」と勝手に親近感を持ちました。同じ頃に能開に通って勉強した全国の仲間も、同じく医師を目指していることにとても励まされました。

永田先生そんなことがありましたか。ご実家が経営する指宿竹元病院は精神科病院ですよね。千代美さんは、なぜ消化器内科をご専門に選んだのでしょうか。

藤井さん消化器内科に興味があったことと、精神科病院の中でもアルコール依存症の治療には内科の専門知識が役立つと考えたからです。現在、精神科・内科・心療内科・リハビリテーション科があり、精神科病院のほかに介護老人保健施設、認知症高齢者のためのグループホーム、精神障がい者の共同住居なども展開しています。
昨年、ティエラよりも少し早く40周年を迎えました。父と私、妹、弟の4名を含め、法人全体で6名の医師が勤務していますが、内科医は私ひとりだけ。内臓などの身体に関わる治療は、すべて私が担当しているので責任の重さを日々感じています。

永田先生

正解のない認知症への取り組みや、生き方を変えさせる依存症の治療。

永田先生能開の生徒だった妹さんや弟さんも、精神科医として一緒に働いていると聞いて感無量です。素人の私には、精神科はとてつもなく難しい分野だというイメージがありますが。

藤井さん内科にはデータという目に見える根拠がありますが、目に見えない病気に取り組むのが精神科です。答えのない病気の治療は、突き詰めれば突き詰めるほどわからない。そんな極めて難しい世界です。

永田先生介護老人保健施設では、認知症への取り組みが重要課題ですよね。

藤井さん認知症は終末期をどのように迎えていただくかが大きなテーマです。最期の選択が求められるため、ご家族とひざを突き合わせて話し合いますが、人生観や死生観、ご家族の想いなどさまざまな人間模様がありますね。 患者さんを取り巻く環境もそれぞれ異なるため、百人いれば百通りの答えがあります。ご家族の選択はこちらの言い方一つで変わってしまうので、誘導しないように細心の注意を払います。ご家族と一緒に私も悩み、「これで本当にいいのか」と自分に問う毎日です。

永田先生認知症はいわゆる一般的な“治療”ではないということですね。そうやって、専門を超えた部分にまで携わっていくのはご苦労も多いことでしょう。また、こちらは全国でも数少ないアルコール依存症専門病院でもありますね。

藤井さんちょうど昨日、アルコール依存症の患者さんのご家族のための講習会でお話をしてきました。ギャンブルや薬物、インターネットなども含めて依存症は、残念ながら問題が顕在化したり、来院した時にはすでに中期以降に進行しているケースがほとんどです。依存症の治療は患者さんの生き方そのものを変えてもらわなければならないので、本人もご家族も本当に大変だと思います。

医師不足の地方医療の現場で子育てとの両立に奮闘中。

永田先生地方医療の現場で活躍している姿は、頼もしい限りです。お父様が地域社会に根付いて築き上げた病院や施設を存続するには、ご苦労もあると察します。やはり地方では、深刻な医師不足に頭を抱えているようですね。

藤井さんこの周辺の病院はどこもみな同じ悩みを抱えており、高齢の医師がフルタイムで働かざるを得ない状況です。80歳以上の先生が勤務する病院も珍しくありません。73歳の父も当直をこなしますし、介護老人保健施設の医師は79歳です。その先生に頼る部分も大きいのでリタイアされたらどうしよう、というのが目下の悩みです。

永田先生医師に定年はありませんが、勉強をし続けなくちゃいけない大変なお仕事ですよね。千代美さんも子育てしながらですから、頭が下がります。

藤井さんむしろ医者になってからの方が勉強するべきことが多いと思います。医療分野は日進月歩で、終わりがありませんから。私にとっていま最大のテーマは、仕事と子育ての両立です。子育て自体は楽しいのですが、まだ5歳なので一緒に過ごす時間をいかに確保するか、毎日自分の中で葛藤しています。

永田先生最後に、医師を目指している人たちへのアドバイスをいただけますか。

藤井さん医師に求められるのは、忍耐力だと思います。私が尊敬しているのは、諦めずに挑戦し続ける医師です。
皆さんも大変だなと思うことから逃げ出さず、諦めない強い気持ちを養っておくことが、必ず将来につながると思います。

永田先生ありがとうございます。

藤井さんこちらこそ、お会いできて光栄でした。ありがとうございました。

藤井さんインタビュー「こぼれ話」

中学卒業とともに鹿児島本校が閉鎖になると知り、お母様の前で号泣したことをよく覚えている、と話してくれた藤井さん。
「高校に入学した先輩が時々遊びにきて、先生と談笑している姿に憧れていたので、なくなってしまうのが寂しくて。でも、こうして永田先生とじっくりお話をするチャンスができ、人生って面白いなとつくづく思います。
明日から、また襟を正して頑張ろう、という気持ちにさせていただきました」

教育理念 困難な時代を生き抜く力

ティエラコムは、創業期より「困難にたじろがない ひとりで勉強できる子に」を教育理念としてまいりました。
「学習塾」とは一線を画した「総合教育運動体」としての姿勢を貫き、子どもの成長の礎となる人間の生地を鍛える教育の実践こそが、私たちの使命であると考えます。

人が生きていく過程には、避けて通れない『困難』が待ち受けています。
それらを安易に回避したり、ストレスで押しつぶされたりといった現代人の忍耐力のなさが問題視されています。
私たちは、困難を乗り越えた先にある喜びを味わえるようあえて多くの試練を用意し、鍛え、励ますことが教育者の役割であると考えます。

私たちの教育目的は、時代やグローバル化の要請に応じて、有用な「人材」を育て社会へ送り出すことではありません。
試練を乗り越えた喜びとともに得た自信を年輪のように重ねた人間こそが、自身の幸せをかみしめ、より豊かな国や世界をつくっていくと確信しています。

ティエラコムの企業活動は、常に「変わらぬ理念」と「新たな挑戦」のもとにあります。

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