医療の最前線を学び続け、患者さんに最善の治療を提供したい。

高畑りささん

現在の防衛省でのお仕事内容をお聞かせください。

東京・市ケ谷の防衛省に勤める、陸海空の自衛隊員や職員など約12,000人の健康管理が主な仕事です。医務室での診療では、風邪から骨折までなんでも診ます。医務室には手術台もあり、ケガの簡単な縫合手術も行います。自衛隊員の海外派遣に先立ち、心身の健康状態を診断して派遣できるかどうかを判断するのも、医官の仕事です。さらに、海外派遣が決まった隊員には予防接種をします。
現在はジブチや南スーダンに派遣されていますが、行き先によっては一人あたり6本くらい打つこともあります。

大学卒業後はずっと防衛省の医務室にお勤めなのですか?

いいえ。一般的には数年ごとに異動があり、自衛隊の医務室や地方の自衛隊病院などで勤務します。卒後2年間は初任実務研修(研修医)を受け、卒後5年目から7年目までの3年間は、専門研修といって、大学で自分の専門科の研修を受けます。
私は消化器外科についてさらに学び、卒後10年目に大学院に入り博士号も取得しました。その後、海上自衛隊の医務室や自衛隊中央病院での勤務を経て、現在の防衛省の医務室には1年半ほど前から勤めています。ここでの勤務も恐らく2〜3年で、状況に応じて異動があるかと思います。

博士号まで取得されたとは、向学心がおありですね。

常に新しいことを知りたい、という気持ちがあるからでしょうか。医療の世界では、新しい薬や治療法が次々に生み出され、常に最前線を学んでいないと患者さんに最善の治療を提供できません。医務室に勤務していても医療現場で経験を積めるよう、若いスタッフは週2回、ベテランでも週1回は、大学病院などで研修を受けるシステムになっています。
私も週1回、防衛医科大学校病院の上部消化管外科の外来に勤務し、外来診療や手術のサポート、後輩の指導などにあたっています。

では、いま挑戦していることはありますか?

近年、医療現場では医療事故のリスクが顕在化しており、医療事故対応の専門医が求められています。私はその専門医を目指すべく、現在勉強をしています。

与えられた環境で、自分の最善を尽くす。その積み重ねが、10年後の自分につながる

大変なお仕事だと思いますが、やりがいは何でしょうか?

患者さんと向き合い、人として信頼関係を築いていけることです。大学に入るまでは、「医師=病気を治す人」と考えていましたが、実際はそれだけではありません。手術をしたら必ず治るというわけではありませんし、常に生と死と向き合う日々です。
とくに、私が専門とする消化器外科は癌の患者さんが多く、自分よりも人生経験豊かな方々に、病気を告知し、受け入れてもらい、治療を進めるためには、まずは人と人としての信頼関係をしっかりと構築する必要があります。
医師とは、患者さんの人生に深く関わる存在であり、それは高校時代に思い描いていた医師像とは少し異なりますが、今は医師になってよかったと、心から感じています。40歳を超えた今でも、もっと学びたい、ずっと学び続けたいと思えるものと出会えたことは、本当に幸せです。

高畑りささん

医師としての今後の目標をお聞かせください。

実は、目標はないんです。今はその日その日をクリアするのが精一杯で、10年後の自分をイメージしようとしてもできなくて…。「こうあるべきだ」、「こうならなきゃ」と目標を立てることで自分を型にはめてしまい、身動きが取れなくなることってあると思うのです。
だから、あえて目標は立てず、いろんなことに挑戦し、そのときに与えられた環境で自分の能力を最大限に発揮できればいい、常にその場でできる最善を目指したいと思っています。そして、10年後も、今のように「10年後がわからない人」でありたいと思います。
10年後、どこで何をしているのかわからないからこそ、人生はおもしろいと思っています。

では最後に、後輩へのメッセージをお願いします。

定期試験や入試といった目の前にあるハードルをクリアすることも大切ですが、それにプラスして、長い目で見て自分の成長を考えることを、意識してほしいと思います。
能開での勉強は、単に高校入試に合格するためだけのものではなかったと、今になって改めて感じています。もし能開に通っていなかったら私は医師にはなっていなかったと思いますし、あの経験は私にとって本当に一生モノの宝となっています。
皆さんも、自分で自分の限界を決めず、夢に向かって思いっきり努力してください。

貴重なお話をありがとうございました。

高畑さんインタビュー「こぼれ話」

今回のインタビューには、姫路本校で高畑さんを指導した大原先生が同席。「とにかく努力の人。そして、絶対に手を抜かない。その性格がノートにありありと表れていたね」と当時を懐かしんでいました。高畑さんのまとめノートは、今も大原先生の手元にあるそうです。

教育理念 困難な時代を生き抜く力

ティエラコムは、創業期より「困難にたじろがない ひとりで勉強できる子に」を教育理念としてまいりました。
「学習塾」とは一線を画した「総合教育運動体」としての姿勢を貫き、子どもの成長の礎となる人間の生地を鍛える教育の実践こそが、私たちの使命であると考えます。

人が生きていく過程には、避けて通れない『困難』が待ち受けています。
それらを安易に回避したり、ストレスで押しつぶされたりといった現代人の忍耐力のなさが問題視されています。
私たちは、困難を乗り越えた先にある喜びを味わえるようあえて多くの試練を用意し、鍛え、励ますことが教育者の役割であると考えます。

私たちの教育目的は、時代やグローバル化の要請に応じて、有用な「人材」を育て社会へ送り出すことではありません。
試練を乗り越えた喜びとともに得た自信を年輪のように重ねた人間こそが、自身の幸せをかみしめ、より豊かな国や世界をつくっていくと確信しています。

ティエラコムの企業活動は、常に「変わらぬ理念」と「新たな挑戦」のもとにあります。

indexへ戻る