大学受験も教員採用試験も、能開で得た勉強法と不屈の精神が支えに。

市内のトップ校への進学は、山岡さんにとってさらに自信になったのでは?

そのはずだったのですが……。高校に入ってすぐの校内試験は、517人中400番ぐらいという散々な結果でした。40~50点ぐらいしか取れず、いきなりの追試です。能開で"上には上がいる"とわかっていたつもりでも、進学校には優秀な生徒が多いことに驚かされましたね。「このままじゃマズイ!」と本気で感じたのは、高校2年とのきです。英語の能力別クラスで一番下のクラスになったことが本当に情けなくて。それに、好きな男の子と同じクラスに上がりたいという気持ちも少なからずモチベーションになりました(笑)。動機はともかくそこから一生懸命勉強して、卒業前は学年で80番ぐらいまで成績が伸びました。

小学校の先生になろうと思ったのは、いつ頃からですか?

小学4年の担任が新任のフレッシュな女性教師で、「自分もあんな先生になりたいな」と淡い憧れを抱いたのが最初です。でも実際、高校入学までは夢を叶えるために勉強したというよりも、とにかく志望校合格が第一目標だったように思います。

高校で進路を決める際に、本格的に小学校教師になろうと決意を?

はい。第一志望は神戸大学教育学部に決めたのですが、センター試験で理科と社会を失敗してしまって、倍率の高い小学校教育科を諦め、やや倍率が低いといわれた幼稚園科に急遽変更したのです。自分自身あまり納得していなかったものの、浪人は避けたかったので幼稚園科を受験しました。結果、幼稚園科に落ちてしまったことで、「やっぱり小学校の先生になりたい!」と再認識できたように思います。後期試験で大阪教育大学教育学部小学校教育科を受けて合格しました。

どんな大学時代を過ごされたのでしょうか?

教員採用試験に向けた勉強に多くの時間を費やしました。能開で身につけた勉強に対する姿勢が軸にあったからこそ、ハードな試験勉強も自分をとことん追い込んで乗り切ることができたと思っています。大学時代も能開で学んだことを実践していたんですよ。

能開での学びをどのように活かしていたのですか?

新聞のタイムリーな時事問題を扱った、能開の宿題が非常に役立ちました。「天声人語」や「社説」などのコラム記事を切り取ってまずノートに貼ります。そして、大事な箇所に赤線を引いてから内容を短く要約し、最後に自分の考えをまとめて書く勉強法です。大学でもこのやり方をコツコツと続けて、教員採用試験の小論文の課題に取り組みました。

その勉強法が実って、教員採用試験に合格されたのですね。

日程の異なる大阪府、愛知県、鳥取県の小学校教員採用試験を受けました。鳥取県は1次試験、大阪府は2次試験で残念ながら不合格。愛知県の採用試験は、倍率10倍の難関を突破して合格することができました。

ノートを自分で作り上げる。そんな学びの基礎を教師として伝えていきたい。

山岡亜矢さん

これまでのキャリアをお聞かせください。

小学校教師として21年目を迎えました。新任で最初の小学校に6年間、さらに2校目は5年間の育児休暇を含めて10年勤めました。2校目は全校児童800人中100人が外国人という特殊な環境だったので、日本語指導など貴重な経験を積むことができました。言葉の壁を乗り越えながら、任された仕事に納得するまで全力で向き合うことで、教師としての幅が広がったと思います。いま3校目の小学校で、4年生の担任や道徳主任を務めています。

4年生はまだまだ幼い部分も多くて、ご苦労が多いのでは?

いままで高学年の担任をする時期が長かったこともありますが、4年生は勉強だけでなくクラス運営から生活指導、授業態度や友達関係までより細やかなケアが必要です。40人の児童全員に目配り、気配りをするのは何年経っても難しいですね。若い頃は、みんな同じように接しようと焦って悩んだ時期もありましたが、最近は一人ひとりの個性を大切にする指導を心がけています。

能開の先生の指導方法が参考になる部分はありますか?

生徒の可能性を否定することなく、できると信じて励まし続ける姿勢は、見習わなくてはと思います。能開の先生たちは生徒一人ひとりをよく見ていて、よいところは必ず褒めてくれましたし、逆に「このままじゃダメだ」と厳しく叱ってもくれたので信頼感がありました。私も子どもにとってわかりやすい指導を心がけ、相談しやすい存在でありたいと思っています。

能開で学んだご自身の経験を、どんな風に小学生たちに伝えていきたいですか?

担任のクラスでは、そのエッセンスを取り入れて実践しています。プリントを切り貼りして、右側(国語は下部)に赤線を引き、要旨をまとめて自分のノートを作り上げていく勉強法です。これを小学4年生に定着させるのは実際なかなか難しいのですが、まずは"ノートは見やすく"をしっかり身につけさせることが第一歩ですね。「私も中学のときにこうやって勉強した」と実感をもって伝えられるので、子どもたちの学ぶ姿勢を粘り強く育んでいきたいと考えています。

公教育と民間教育の垣根を超えて、普遍的な学びのスタイルと言えるのですね。

その通りです。すでに2020年度実施予定の大学入試改革を見据え、小学5・6年生の授業には「新聞記事を読み比べよう」という教材も組み込まれていますが、ノートを自分で作る勉強法が最も適していると思います。論旨要約する訓練は、大学入試の小論文や面接、集団討論にも役立ちますし、活字離れが進む中でますます重視されていくはずです。