アオザイ通信
【2005年2月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

< ベトナムを自転車で縦断した日本人 >
たまたまある日、ベトナムの北から南まで約1700Kmを2年前に自転車で縦断したという日本人の青年・Wさんに逢いました。
東京都出身で32歳、まだ独身だと言っていました。

見た感じは普通のどこにでもいる日本人で、話す時の言いかたにも、そんなもの凄いことをやり遂げたんだという気負いもなく、日本国内を走って来たような淡々とした話し方でしたので、余計に感動しました。

ベトナム縦断に使用した彼の自転車は、日本から持ち込んだ折畳式で、それを飛行機にも、バスにも持ち込んで乗り継いで走ったといいます。その彼が乗っていた自転車を見ると非常に頑丈な感じで、(こんな大きいものをよく折り畳めるものだな〜)と不思議に思ったほどでした。

彼が訪れた時期は4月で、ベトナムでは雨期に入る直前の季節ですが、大した雨には逢わなかったといいます。舗装されていないデコボコの山道も、坂道もすべて一台の自転車で南北を約2週間ほどかけて走破したそうです。

ベトナム人はともかく、外国人でやはり田舎道を自転車で走っている人間は珍しいらしく、到るところの田舎でベトナムの人たちから大変親切にされたとニコニコと話してくれました。自分の家に招待してくれて、そこの一家がみんなで歓待してくれたこともありましたと感激していました。

ある一人のベトナム人から「何でまた自転車で旅するの?バイクで行くほうがはるかに楽だし、早いのに・・・?」と質問された時に彼は、「自分がそちらのほうが好きだから」と答えたそうです。

確かに自転車の旅は肉体的にはしんどくても、バスでの旅と違い、自転車の目線の高さでベトナムの風景や人たちを見ることが出来るし、好きな場所で休憩出来て自分のペースで予定を組めるということにあるんでしょう。ただしリスクは伴うし、時間に余裕のある人でないととても実現出来ない贅沢な旅だとも言えますが。
私もベトナムの田舎を通る時に、30年前の日本の田舎を想起させるような風景に出会う時に、(何といういい光景だろう・・・)としばらくホレボレと見とれるようなことがありますが、ベトナム人のバスの運転手はそういう外国人の郷愁などにはお構いなしで、いつももの凄いスピードで車を飛ばして行きます。
それだけに彼が自転車で旅をすることにこだわるのも何となく分るような気がします。彼はこれからもアジアのいろんな国をその自転車で走破して行くと、張り切ってまた旅出って行きました。





「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。

■ ■ 今月のニュース 「 テト・・・帰郷を急ぐ人たち 」 ■ ■

今年も1月末からテトで故郷に帰る人たちで、ベトナムの駅や空港やバスターミナルは大混雑する。サイゴン市内にあるバスターミナルでは、テト直前には切符の値段が上がるので、それを避けるために1月中旬くらいから乗車切符を手に入れようとする人たちで混み合っている。

また1月28日にはサイゴン駅では400人の人たちが、一旦手に入れた切符をその当日のあまりの混み具合を恐れて、切符を返して費用を払い戻してもらうという事態も起こっている。 
またここ3日間で(1月27日から29日まで)、サイゴン市内にあるバスターミナルでは普段は3000人〜5000人のお客が毎日28000人〜30000人に増えたという。今年はいつもより少し早く帰郷する人たちが多くなったとバス会社も認めている。

■サイゴン市内にあるバスターミナルの事例■
★少ないバス台数・切符の高騰を恐れて、早めの帰郷★
1月末のある日、サイゴン市内にあるターミナルでは普段の日と比べて多くのお客がバスに乗り込んだ。またいつもだったら3分で切符が買えるのに、この日は多くのお客が切符を手に入れるために行列待ちしていた。朝にここでの光景を見た時にも、故郷に帰る多くの人たちで混雑していた。

いろいろと話しを聞いてみると、我々が見た中で故郷に早く帰って行く人たちの大部分は、自由業の人たちであった。会社に勤めている人で、故郷に早く帰れる人たちの数は少ないほうであった。また切符の費用も、テト真っ最中に帰る人たちの値段は、20〜60%に値上がりしたのに比べて、この時期に早く帰る人たちは安い切符の値段で済んだ。

ホーチミン市郊外で家具製造業で働いているAさんは、今回ベトナム北部のハノイ市近郊に帰るにあたって、1月20日前に切符を買った時にはまだ値上がりしていなかった。

しかしそれでもその時に見たバスで帰郷している人たちは、バスの中ですし詰め状態で満員の状態であったという。このAさんはハノイに帰るに当たって、上司に「自分の故郷はサイゴンから遠く離れた田舎なので早く帰郷させて欲しい」と頼み込んでようやく帰る許可を貰うことが出来たという。しかし故郷がサイゴンに近い人たちは、1月の末の今もまだ働いているのだという。

★バスの増便は間に合うか?★
例え1月29日からバス会社の仕事が最も忙しい時期が始まっても、このテトの時期の突出したお客の増加数に応じる計画をバス会社は建てているという。サイゴン市内のある旅行会社の主任の話しによると、その会社でもこのテト期間中の帰省客の増加数に対応して、バス車両や運転手を増員する体制を整えたと話してくれた。

またバスターミナル会社の事務所の話しでは、例年帰郷する客で一番多いのが中部にあるQuang Ngai(クアン ガイ)地方で、そのために普段は1日1台のバスを今年は6台に増やした。さらにハノイ行きは、1日1台から8台に増やしたという。

テトが近づくにつれて、日々切符の値段も値上がりしている。普段は値段の一番安い、クーラーもない、古い、3等級のバスの切符が、今はクーラー付きのバスの切符の値段と同じにまで上がっている。

それでもバスターミナル会社の社長は、「このテト期間中は多くの帰省客の不安を解消するために、毎日バスを増便し続けるので安心して欲しい」と力説してくれた。

(解説)
ベトナムの今年のテトは2月9日です。毎年のテトは飛行機も鉄道もバスも、田舎に帰る人たちで大混雑します。以前サイゴン駅に、テトの直前の時期に切符を購入しに行ったことがありました。駅に一歩足を踏み入れると、それはそれは想像を絶する光景で、徹夜で切符を買おうとしている人たちで溢れかえり、さらにスキあらば割り込こうとする人たちとの戦いで疲れるばかりでした。

そしてようやく切符購入の窓口に近づいても、その近くにいる十人ほどが一斉にワシヅカミにしたお金を窓口に突っ込んで切符を奪い合うというやり方でしたので、とてもとても外国人に太刀打ち出来るレベルではありませんでしたので、ついに買うのを諦めて帰った思い出があります。

テトの時期にはまたサイゴン市内の路上の庶民の食堂は閉店してしまいます。そこで働く従業員みんなが田舎に帰ってしまうので、自動的に店が閉まるわけです。ただし外国人相手の高価なレストランは空いてはいますが・・。それで私は独身の時には、どういうわけかテトの時でも空いているヤギ肉屋さんで、毎日ヤギ肉ばっかり食べていました。

今年のテトも、どうせどこかに出掛けても多くの人でごったがえしているのは分り切っていますので、おとなしく家で過ごすことになりそうです。紅白歌合戦などはありませんが。


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