アオザイ通信
【2003年2月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

ようやくこちらも、今年の正月(テト)が終了しました。大晦日が 太陽暦の1月31日で、この日の零時・2月1日に日付が変わる時が新年の始まりです。この日は奥さんの家で宴会。夕方からしこたまビールを飲まされました。

さらにこの31日には公園に花市が立ち、それはきれいな花や盆栽などが売られて、家に飾るためにそれを買い求めるお客で賑わいます。そしてこの日の零時に、サイゴン川の対岸から花火が打ち上げられて、それが15分ほど続きます。

数年までは日本からこの打ち上げ花火の指導にも当たっていたということですが、最近はベトナム人だけでやっていくようになりました。まあ爆発事故などもなく無事終了しました。

そしてさらにこの日の零時に家々では、先祖の霊を天に送る儀式を行って新年を迎えることになります。路上では新年を祝うために街中にバイクで繰り出した人たちと、この花火見たさに集まった人たちでいつものように大渋滞。

そして2月1日・正月にまた実家にみんなで集まり、家族のみんなに恒例のお年玉のプレゼント。こちらでは日本と違い、お年玉は子供だけではなく、日頃お世話になっている、良い年をした大人にも上げないといけません。

最初は自分よりも年上の人にお年玉を上げるという習慣は奇妙に思えましたが、いずれ将来は私もその恩恵に預かるのだと思うと今後も無くならずに、ずっと続いて欲しい風習ではあります。

まずお父さん・お母さん・おばあさんそれぞれに、100,000ドン(約800円)をお年玉袋に入れて上げると、みんな「いや〜ありがとう!」という感じで手を出して受け取り、すぐポケットにしまって立ち去って行き、次に甥っ子たちもお年玉を貰えるだろうという、期待に溢れた顔をしてやって来たので、まだ3歳の子供には5,000ドン(約40円)を上げると、すぐ別室に去って行きました。

もらったお年玉の中身を確かめているのだろうとは分かりましたが、すぐ部屋から出て来てその母親に「さっきのは少な過ぎる! もっとくれるように言って!」と頼んでいるのを見て、みんなが大笑い。

いや〜こちらの子供は小さくても、お金にはシビアです。それでまた改めて50,000ドン(約400円)を入れて上げると、こんどは大いに喜んで満足した様子。

2月2日は新年のお寺参り。ふつう正月1日〜3日の間にお寺にお参りに行くのがベトナムの風習とのこと。さすがにこの時だけはサイゴン市内の道路もバイクの数がぐんと少なくなり、閑散としてシ〜ンとした雰囲気です。

ベトナム人が参りに行くお寺も毎年決まった、自分の信仰するお寺である必要はなく、その時に都合の良いお寺を決めてお参りするようで、今年は何とみんなでヒンズー教のお寺にお参りすることになりました。もちろん家族にはヒンズー教の信徒は一人もいません。

しかしいざお寺に行くとなると家族の団結は固く、一人として「いや、僕はこれから友達と遊びに行く約束があるから・・・」などと言う兄弟は無く、家族みんなで揃ってお寺参り。

寺の入り口で一人2,000ドンの線香を買い、それに火を付けてお寺の中をグルグル回って、願い事を祈りながら線香を挿して行く人たちでごった返し、お寺の中はもうもうたる煙りにあふれて目が痛いくらい。このお寺の屋根のほうを見ると、象やサイや猿などの奇怪な彫刻が飾ってあります。

「しかし何でまたヒンズー教のお寺なのだろうか?」と不思議にも思いながら、要は線香を上げてお祈りする場があれば宗教の違いはあまり気にしないようで、この点は日本人と同じく宗教には柔軟・寛容な国民のようです。

そして2月3日は、天上界に行った祖先の霊を地上に迎える日になっていて、またこの日も実家にみんなで集まります。祖先の霊も人間界の都合で天に昇ったり、地に降りて来たりと忙しいことでしょうが、新年を祝う儀式と先祖を敬う儀式を2つ併せてこの3日間に行うのが目的のようです。この日もまた宴会。しかし食べ物は3日間とも、基本的には同じメニューが続きます。

そして遠くに行った人たちも、このテトの日に家族みんなと顔を合わせるために故郷に帰省し、3日間はドンチャン騒ぎをして、それが終るとまた都会に帰って行くというのが、ここベトナムのテトの祝い方です。

先祖を敬う国民性が無くならない限りは、このような風習は今後も続いていくことでしょう。


フーンさんのニッポン日記H

春さんの故郷での日々

<2002年3月20日(水)>

■春さんの親戚巡り■

春さんの親戚にアイサツに行くために、今日は2人で車で回った。全部で今日は四軒回るというけど、私は一軒目で疲れた。横に座って聞いていても、何を話しているのか良く分からないし、お茶はいっぱい飲まないといけないし。妙な色の、妙な匂いのツケモノをよく出されるし…。最後の四軒目の家を出た時は夜も遅く、今日は本当に疲れたわ。体もだるくて、気分が悪いし、頭が痛い。

<2002年3月22日(金)>

■ああ、早くベトナムに帰りたいな〜■

あれ以来ずっと体調が悪い。風邪らしい。頭は痛いし、吐き気はするし、気分が悪いわ。一日中何も出来ない。外にも出れない。何も食べれない。今日も食べたのは、おかゆを少しとスープを少し飲んだだけ。それとベトナムから持ってきたタマリンドの実を少し、時々かじるだけ。何にも食べれない。何にも食べたくない。

春さんは毎朝どんぶり一杯にご飯を入れ、その上に納豆と生卵をかき混ぜて美味しそうに食べているけど、あんなものが美味しいなんて信じられない。納豆なんて臭くて、臭くて…。私の近くに持ってこないで欲しい。

お母さんが私のために心配して、スーパーからマンゴーを買って来てくれた。私も嬉しくなって早速食べた。でもその味は…。全くマンゴーの風味も味も匂いもなかった。産地を見ると、フィリピンからと書いてあった。たぶん日本に来てから、だいぶ月日が経っているのだわ。ベトナムのマンゴーと全然違う。パイナップルも食べたけど、やはり美味しくなかった。

ああー、ベトナムのフォーがここにあれば、お腹いっぱい食べれるのになー。ベトナムの果物は種類が多くて、安くて、何と美味しいのだろう。ドリアン、マンゴー、ライチ、マンゴスチン、ザボン、ドラゴンフルーツ、ミルクフルーツ、ジャックフルーツ、パパイヤなど数え切れないくらい多い。

それにここは山の中で、気分転換に出かけようにも何も面白いのがないところ。どこにも遊びにも行けないし、つまらなーい。早くベトナムに帰りたあーい。

<2002年3月26日(火)>

■ 婚礼写真の前撮り■

あれからもずっと体調が良くない。どこにも行けずに家で寝ていた。ほとんど食べていないので、やつれて、だんだんやせていってるようだ。私の母が今の私を見たらびっくりするだろうな。病院に行って、点滴や薬を飲んでも全然良くならない。どうなってるの…。悲しくて、夜になると涙が出て来るわ。ベトナムが恋しい。ベトナムに帰るまで、まだ10日もあるなんて…。

でも今日は、写真のアルバムのための撮影があるそうなので頑張ろう。全部で3時間くらい写真の撮影に掛かったけど、なんとか今日は頑張れた。今日は白とピンクのウェディングドレスを着て写真を撮ったけど、キレイに出来ているかな。

この日は3月30日の披露宴に着る着物も決め、カツラも準備してもらった。カツラはキツクて痛かったけど、みんなが「お姫さまみたいで、かわいい!」と(お世辞?を)言ってくれたので嬉しかった。でも着物は大変重くて、歩くのが大変。ゆっくり・ゆっくり歩かないと転びそうで、当日が心配だわ。

ホームシックも体調不良も乗り越えて披露宴の準備は着々と進む。いよいよ次号は披露宴です。お楽しみに。



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