アオザイ通信
【2005年12月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

<サイゴンで日本留学フェア開催>
11月末にサイゴン市内の大きいホテルで、「2005年日本留学フェア」が開かれました。事前に配られたパンフレットには、日本から約40の国・公・私立大学と10校ほどの専門学校や日本語学校が名を連ねていました。今年で、このような企画は3回目になるということです。

当日そこに出席すると、各大学ごとにブースが設けられていて、日本人の担当者とベトナム人の通訳が配置されていましたので、ベトナム人も自分の関心のある大学の情報を個別に聞けるようなやりかたになっていました。

パンフレットに掲載されていた全部の大学のブースはありませんでしたが、東京大学や京都大学などの有名な国立大学はもちろん、早稲田慶応などの私立大学のブースや、日本語学校のブースもありました。

その中に私の母校のC大学もありましたので、懐かしさのあまりそこの年配の日本人の担当者に話しかけてみました。その人によると、今C大学にも2人のベトナム人留学生が来ていて、その2人とも日本政府から学費をもらう国費留学生として来ているということでした。当然成績も優秀なのでしょう。彼等2人の日本留学期間は、4年間だということです。

この日本留学フェアでは、午前と午後の2回に一時間ほどの全体説明会がありました。私は午前の方に参加しました。3百人くらい入る会場は満席状態。会場内に来ていたのは、大学生くらいの若いベトナム人がほとんどでした。私の隣に座った生徒もベトナム人の男子生徒で、日本に留学する夢を持っているので、今日本語学校に通っていると言っていました。

最初に日本人の留学担当者から、日本留学での失敗の体験例が述べられました。その内容は(1)行く前に学校の内容を詳しく調べていないので、行ってからまた学校を代える。(2)日本での学費・生活費がいくら掛るか良く分からないで行く。(3)授業についていけない(4)ホームシックにかかる・・・・などだそうです。

質疑応答もあり、ベトナム人が盛んに質問していたのは「奨学金制度」についてです。奨学金制度も行く大学のレベルや内容に応じてその奨学金は違うようですが、一番高いのは日本政府から国費留学生として支給される場合は、一ヶ月175,000円が支給されるといいますからずいぶん恵まれているといえるでしょう。

留学の仕方には、政府が学費や生活費の面倒を見るこの国費留学という制度と、すべてを自分で負担する私費留学というのがありますが、高い物価の日本では私費留学の生徒にとっては(ベトナムでは裕福な家庭の部類に入るんでしょうが)学業以上に生活が大変らしく、学校に通いながらアルバイトをしている生徒が多いそうです。

説明会は一時間少しで終りました。後でその説明をした人から話しをいろいろ聞きました。その人によると、ベトナムからの留学生は1991年からスタートしたそうです。今年一年の単年で区切ると、今約1500名のベトナム人留学生が日本に滞在していて、そのうち全体では400名〜500名くらい(一年に100名くらい)が国費留学生として日本に来ているそうです。

「今日本に留学生として来ている生徒で、一番多い国はどこですか?」と聞きますと、「やはり中国ですね。今7万人くらい来ているでしょうね」という答えでした。

7万人というのはこれまたもの凄い人数ですが、こういう外国からの留学生たちが日本で日本人と深く交流し、日本の文化なども学び、真面目に日本での学業を終えて自分の国へ帰れば、それこそ草の根レベルで日本及び日本人を理解してくれる人たちが増えてくることでしょう。





「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。

■ 今月のニュース 「欧米への労働者派遣、まだ狭き門」■
2005年度10月までに、世界に派遣されたベトナム人労働者の総数は、約57,000人(内女性が20,860人)に達した。そのうち台湾が20,735人、日本が2,460人、韓国が8,350人、マレーシアが19,521人、ラオスが5,600人で、その他の外国は680人でしかない。

最近多くの人材派遣会社が新しい労働者派遣の候補地として、アメリカ・イタリア・カナダなどの国での労働契約内容について通知している。

それによると、一ヶ月の収入や待遇面においてはるかに今までの他の国よりも魅力的なものとなっている。例えば、特に今熟練工でなくても、研修費用や飛行機の切符代は免除されることになっている。特に労働者が外国で働く場合に心配なのは、“食事”の問題が一番大きいが、その点でも当地で満足出来る待遇が受けられるという。

しかし外国労働管理局の市場開拓部の責任者の言によると、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イタリアなどの国は、これらの国でベトナム人が働くには入国手続きと法律の面で大変難しいという。

特にアメリカとカナダでは看護婦の需要が高いが、その職種で働くには高い能力が労働者に要求される。その能力とは、香港かタイで行われる国際標準の看護婦の試験に合格し、看護婦の経験が1〜2年あり、なおかつTOEFLの試験で540点以上に達していることなどである。

それらの条件を満たすには高い壁があるが、それを乗り越えると当地では一ヶ月1,200〜1,500ドルの収入が得られるだろうという。

(解説)
ベトナム人労働者の海外派遣は、ベトナム国にとってベト僑(海外に住んでいるベトナム人)の海外からの送金と並んで、貴重な外貨をもたらしてくれるものとして高く評価されています。

それが今現在は主に台湾・日本・韓国に多く労働者が派遣されていますが、今後は欧米にも進出していく方向で外国労働管理局も考えて来ているということです。

また人材派遣会社にとって一番頭の痛い問題は、ベトナム人労働者の“逃亡・失踪”です。必ず毎年何人かが仕事先から逃亡して行方不明になるといいます。そうなると次の年から、その人材派遣会社は厳しい審査を下されて、次の労働者の派遣にも大きく影響してくるからです。

私自身も実際に日本に労働にこれから行く人、すでに3年の労働を終えてベトナムに帰って来た人を知っていますが、やはり異国では様々な苦労を重ねているようです。ついこの間日本に行ったベトナム人研修生のことを、(今ごろみんな元気にしているだろうか?)と、ふっと思い出すこともあります。

その彼等と別れる時には、「3年間しっかり頑張って、無事ベトナムに帰って来いよ!」という言葉を贈るだけでした。


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