アオザイ通信
【2006年8月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

<研修生・Lさんからの便り>
5ヶ月前に日本に行った研修生・Lさんから、日本での近況や仕事の内容を知らせてくれる連絡が珍しくありました。Lさんは今、愛知県で働いています。同時期に日本に行った研修生の中では日本語も大変上手で、快活な、明るい女性です。

私は1年以上前からずっと、研修生たちが日本に行く前に教室で別れる時には、「みなさんも毎日仕事で疲れて大変でしょうけど、日本にいる3年の間に時々は先生たちに、日本でのみなさんの元気な様子や近況を手紙ででも知らせて下さいね!」と声をかけていました。するとほとんどの研修生たちが、その場では「はい、分りました。先生、必ず手紙かメールを出します!」とはっきりと約束してくれました。

しかし今までそういうふうに、「はい、出します!」と言ってくれた人に限って連絡が来た試しがありませんね。しかしまあこの点に関しては、ベトナムを訪問する日本の人たちも同じような傾向がありますので、(約束した以上は、必ず連絡をくれるだろう)とは、あまり私も期待はしていませんが。

今観光名所となっているカンザーのゲリラの基地には、以前このカンザーでのゲリラ戦を体験した本当のゲリラの戦士がいます。今平和が訪れたベトナムで、その人がこのゲリラの基地の案内と解説をしています。なにせ自分の実体験をそのまま話しますので、ゲリラの基地の解説者としてはこの人ほどの適任者はいません。

彼の年齢は今50代後半ですが、その顔付きは今も眼光鋭く、声も大きく、筋肉は引き締まり、今からでもまだ現役で戦えそうな風采をしています。私がゲリラの基地に日本人の知人や大学生を案内する時、「この人は当時ここで実際に戦っていたゲリラの戦士ですよ」と紹介すると、「わー、ぜひ写真を一緒に撮らして下さい」と頼んできます。

その依頼を彼に伝えると喜んで「いいよ」と快諾して、みんなと一緒の写真を撮らせてくれます。そして写真を撮った日本人は、彼に写真の送り先を手帳に書いてもらい、「日本へ帰ってから、写真をきっと送りますからね!」と約束して別れて行きます。今まで何十人もそういう日本から来た人たちが彼と一緒の写真を撮っては、「必ず送りますからね!」約束してくれたそうです。

しかしその結果は…と言うと、何と今まで誰一人として写真を送ってくれたことなどないそうです。それで彼は、「日本人は出来もしない約束を何でするんだ!」と私と会うたびに怒っていました。約束した数十人のうちの2・3人でも彼に一枚・2枚の写真を送ってくれていれば、彼の機嫌も悪くないのでしょうが。
あまりにそれが度重なるので、仕方なく私が彼の写真を撮って、後日送ってあげたこともありました。

そういうこともあるので、研修生たちからも3年の間に1回くらい連絡が来ればいいだろうなあーと思っていました。それがこのLさんはこの1ヶ月ほどは週に1回はメールを先生たちに送ってくれています。

「日本での生活や、仕事や、日本語はどうですか?」と私が彼女に質問しました。と言っても彼女のコンピューターは日本語での受信がダメらしく、お互いのやりとりはローマ字で書いた日本語です。

彼女は、「やはりベトナムと違い、日本は経済が発展している国だと自分の目で見て実感しました。しかし学校で習った日本語と、この愛知県で日本の人たちが実際に話している日本語はずいぶん違います。それで大変聞きづらいです」

「今はお金があまりないので、まだ多くの種類の日本料理は食べていません。でも回りの日本の人たちは大変親切ですし、日本は安全な国だと思います。仕事も時に残業があり、1日10時間働くこともあります。でもこういう国であれば友人たちとも、3年間しっかり頑張れるねと話しています」と答えてくれました。

私のように研修生たちに日本語を教えている者は、日本に行った研修生たちが、(どんな仕事をしているのだろうか?)(日本語は上手くなっているだろうか?)(日本料理には慣れただろうか?)(回りの日本人は彼等に親切にしてくれているだろうか?)(何かトラブルに遭っていないだろうか?)…等々と、日本での彼等の過ごし方に時に思いを馳せることがあります。

そういう時にこのようなLさんからの数少ない、珍しい、日本の近況を知らせてくれる連絡は、ちょうど江戸時代の日本が長崎の出嶋を通して世界の情報を知ることが出来たような大変貴重な有り難さがあります。これから3年の間に、彼女がどのような情報を届けてくれるかが楽しみです。


※春さんは1997年春よりホーチミンに駐在しています。今ではすっかり現地の人となって、見分けもつかなくなっています。春さんに質問や相談があればメールをお送りください。
info@te-campus.com ※件名を「春さんに質問!」にしてくださいね。




「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。

■ 今月のニュース 「ベトナムはアジアで一番幸せな国」■

ベトナムはアジアで一番幸せな国である。…生活環境上の国民生活の幸福さを研究している英国にある新経済基金(NEF)によって、このような調査結果が発表された。

この研究によると、今回調査した178ヶ国の中で、国民生活の幸福度の高さにおいてベトナムは12番目に位置しているという。

この順位表はその国の経済力ではなく、ある国の国民生活の満足度を表わしているもので、その国の気候環境や、国民が各年齢層において消費する米・肉・魚・野菜・果物などの食料品の価格や、各種燃料などのエネルギーが、他の国と比較して国民がそれを手に入れるのに必要・十分な満足度を与えているかの観点から見たものである。

その順位表では、ベトナムはアジアの国々の中で先頭に立っているのである。その他の国々の順位を紹介すると、フィリピン(17位)、インドネシア(23)位、中国(31位)、タイ(32位)、マレーシア(44位)、インド(62位)、パキスタン(112位)、シンガポール(131位)であった。

この順位表で一番目は、太平洋の西南にある多くの島からなる面積14,763平方キロメートル、人口20万人のバヌアツ国であった。その次に続くのはコロンビア、コスタリカ、ドミニカとパナマであった。178ヶ国中の最下位はジンバブエであった。

G-7に代表される先進工業国は、必ずしも幸福度の高い国々ではない。むしろこの順位表の中では、中間にいるか後ろのほうに位置している。例えば次のようになっている。
イタリア(66位)、ドイツ(81位)、日本(95位)、イギリス(108位)、カナダ(111位)、フランス(129位)、アメリカ(150位)という具合であった。

NEFの政策責任者のアンドリュー・スミス氏は次のように言う。「この幸福度の順位表は、その国民がより良い生活を創出していく上での、各国の成功と失敗を表わしている。
これから大事なのは、限りある環境資源・自然環境の下で各国がそれを尊重・有効活用しながら、その国民に対していかに満足度の高い生活環境を与えていくかである」と。

(解説)
この記事のタイトルを見た時、思わず「ほんまかいな!」と叫びたくなりましたが、良く考えるとNEFが調査・発表しているのは、「外国人から見たベトナムという国の幸福度」ではなく、「ベトナム人から見たベトナムという国の幸福度」なんだということです。

今のベトナム人の大部分は、外国に出掛けることも少なく、自国と外国との良いところや悪いところの比較も十分に出来るはずがありません。

しかし世界の中でもベトナムはまだ貧しい国の一つでありながら、幸福度においてはアジアの中で最も豊かな日本や、他の国をも追い抜いているというのは興味深い研究発表だと思います。

私自身がこちらサイゴンに住んでいて「ベトナムはいいなあ〜」と思うのは、何といっても「寒い冬がない」ということです。

さらには日本の夏はどういうわけか、むしろ赤道近くにあるサイゴンよりも蒸し暑いことが多いですね。季節風の影響なのか、こちらの夏は日本の夏よりも過ごしやすい気がします。

その点だけを見ると、ベトナムは確かに「生活しやすい国」の一つだろうとは思います。



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