アオザイ通信
【2003年10月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

<Mさんの訪越>

いつも9月になると、日本から一週間ほどベトナムにやって来る人。それが私の知人のMさんです。Mさんは日本では、朝早くから夜遅くまで働いている、40代初めの普通のサラリーマンです。

そのMさんが初めてベトナムに来たのは今から6年前で、それから毎年このベトナムに訪れていますので、ちょうど今年で6回目になります。

この6回のベトナム訪問の間に、ベトナムのどこを訪れたのかというと、何とどこにも行かずにミニホテルのフロントの椅子に座り、そこの管理人の爺さんを相手に朝からビールを飲みながら談笑しているだけなのです。

Mさんは「このベトナムで観光で訪れた唯一の例外は、カンザーくらいのものです」と自分でも言ってましたが、そのくらいアチコチを観光で動き回るタイプの人ではありません。

ちょうどじっと熱い風呂の中で、その熱さを楽しむかのように、この暑いベトナムでもどこにも出かけずに、じっとホテルにこもっているだけです。私からすると買物などの通訳に同行する必要もなく、日本からやってくる人でこれほど手の掛らない人も珍しいくらいです。

そして夕方になると「そろそろ豪遊しに、メシでも食いに行きますか?」と誘いの電話が私と浅野さんに掛って来ます。私もその時には「行きましょう!」と、二つ返事で答えます。

実際このMさんがベトナムに来る時が、ふだんはベトナム料理ばかり食べている浅野さんや私は、一年の中でもMさんが誘ってくれるこの時が、日本料理屋や韓国料理屋に行く数少ない機会ですので、ひさしぶりに今日は違う料理を味わえるかと思うとウキウキして来ます。

そしてこの豪遊パターンが一週間ほど続いて、いつものように「それではまた来年!」と言い残して、日本に帰って行くのがMさんの訪越のパターンなのですが、彼が帰るたびにいつも「何が楽しくてこのベトナムに来ているのだろうか・・・?」と不思議に思いながらも、私から見れば奇特な人というしかありません。

ベトナムに来ても、どこにも行かずに朝からミニホテルで爺さんとバカ話しをして時間をつぶし、夕方になるとやおら腰を上げて私や浅野さんに夕食の大盤振る舞いをしてくれるという、いつも決まったように同じパターンの一週間をベトナムで過ごして日本に帰って行く人。それがMさんなのです。

Mさん、来年もまた会いましょう!


フーンさんの子育て日記D

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これは日本人と結婚して、昨年初めて赤ちゃんを産んだベトナム人女性・フーンさんの半年間の子育てを、日記ふうに綴ったものです。
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*三ヶ月目*

今年2003年は2月1日がテト(旧正月)になります。朝からみんなで実家に集まり、いつものようにテト特有の食べ物を揃えて食事会をしました。兄弟のそれぞれが私の赤ちゃんを抱いて頬擦りをしてくれて、さらにその後来た親戚のみんなも、自分の子供のように抱き上げて笑顔を浮かべて喜んでくれました。

その後ホーチミン市内にあるヒンズー教のお寺に、家族全員でお参りに行くことにしました。私は普通の日本の人と同じように仏教徒です。ベトナムではテトの時にお参りするお寺は宗教の違いは関係なく、大きくて・有名で・多くの人が集まるお寺であれば良いので、家からも近いしそこにしました。

門の外で2,000ドン(約15円)の線香を買い、みんなでそれを分けて自分の好きな場所でお祈りして、線香を挿していけば良いのです。門の中をくぐるとモウモウとした煙で目が開けられないほどです。でも回りのみんなを見ると、必死になってお祈りしています。

中には壁に手や頭を当てて、何かをつぶやきながら祈っている人たちもいます。私もいろんなお願いを神様にしました。子供を持ったお母さんはみなさん同じだと思いますが、私も子供のためにいっぱい祈りました。

この頃になると赤ちゃんも元気になって来て、春さんの日本から来た友人も、服などのお土産を持って来て訪ねてくれました。最初に子供と顔を合わせた時に、私の赤ちゃんがもうすでに耳にピアスをしていたので驚いたと言っていました。

そう言えば私の赤ちゃんの場合は生まれてすぐに、病院に入院している時にそこで耳に穴を空けてくれました。そのまま穴が塞がらないように、空けた痕には釣り糸のような透明のヒモを通していました。ただこれはみんながそうではなく、親の希望によってすぐ空ける場合もあるし、そうでない場合もあるようです。空ける場合はお金を払わないといけません。

またこの頃には、自分の指を口に入れて盛んにしゃぶっています。生後まもないころから約一ヶ月目までは、親指だけをしゃぶっていました。それで両手に袋をかぶせていました。二ヶ月目を過ぎたころは自分のゲンコツを口に入れて噛んでいました。そしてこの三ヶ月目には片手の指を全部口の中に入れて遊んでいます。でもこのころには両手の指が発達して来る時期なので、袋は外して自由にさせていました。

また赤ちゃんをうつむきにさせると、首を自分で持ち上げて右や左にゆっくりと回して、辺りの景色をじっと見ています。以前は首がまだしっかりと座っていませんでしたが、もうこの頃になるとずいぶんと首が座って来たようです。さらに足を思いきりバタバタさせるのが好きなようで、両手に力を込めて両足を必死に動かし始めました。

そしてまた三ヶ月目に体重・身長をいつものように測ったら、身長が54cmで体重が5kgまで増えていましたので、お医者さんも「順調に大きくなっているよ」と言ってくれました。今までは主に母乳が中心で、それ以外に毎日120cc入りの哺乳瓶を3本は飲んでいます。来月からは離乳食を少しずつ与えるようにと言われました。

つづく



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